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続編です。恋の行方、どうなるかな~?

 

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シーン16: 夢

その日の夜、夢を見た。

いつかの夜みたいに桜が満開の川べり、提灯が下がり花見客が行きかう中を私とシゲは歩いている。春なのにシゲは浴衣を着ていて、寒くないの?って私がきいたら、寒いよ。だから暖めてよ、っていたずらっぽい顔で見て、手を広げておいでという仕草をする。私がシゲに抱きつこうとした瞬間に、私が見ているのがテレビの中のシゲだということに私は気が付く。シゲの隣には誰か別の女性が立っていて、どこにも桜なんか咲いてなくて、夏祭りの縁日が並ぶなか、どこから見てもお似合いの二人が楽しそうに歩いていく、、、というところで目が覚めた。

 

 

シーン17:朝の電車

目が覚めてのろのろと起きて洗面所の鏡を見ると青白い顔をした女が映っていた。

きのう、レストランに行くときにはあったキラキラしたものは消え、不安と希望で胸を膨らましていた自分が心の底からバカ、ほんとうにバカだと思いながら支度をして家を出た。

何を言われたわけでもないけど、もうどこにも希望なんてなかった。

つり革につかまって外を眺めていたら、「失ってはじめて人は失くしたものを気付く」って言葉が浮かんできて、じわぁ、、と涙が出てきた。

なんでちゃんと好きだって伝えなかったんだろう。何も言ってない。勝手に遠慮して、傷付きたくなくなくて、余計に傷付いた。

顔をおおったら大泣きしそうだった。

 

やっぱりちゃんと言おう。このまま会えなくなったら、絶対にもっと後悔して引きずる。今日は仕事をちゃんと終わらせて、仕事が終わったら電話をしよう。

 

電車に揺られながら、なんていうか考えた。昨日はありがとう。昨日は言えなかったけど、私、シゲのことが好きです、、、そのあとの言葉が続かない。付き合いたい?いやそれは.... でも、この気持ちは伝えないといけない。

 

 

シーン18: 夜の電車

早く帰ろう、と思っていたのに仕事のトラブルが発生して遅くなった。朝感じていた「絶対に好きって言おう」と思った気持ちがしぼんで小さくなっていく。

残業中も何度も携帯を見た。もしかしたら、もしかしたらと思って。でも期待してる人からの通知はなく、朝の決意はどこかに去っていこうとしてた。

自宅のある駅で降りて、疲れた。。。帰ってゆっくりお風呂に入ろう、と思いながら改札を出たところで携帯が鳴った。

 

 

シーン19:駅

着信画面にはシゲの番号。指が震えた。

「あ。お疲れさま。外?まだ仕事?」

私が駅名を言うと、

「そっか、、、あのさ、今から会えない?すぐ済むから。」とシゲ。

「え?今どこにいるの?」と私がきくと、

「あ、、、わりと近所。というか家のそば。よく考えたら、場所は知ってるけど、部屋番号は知らなかった。」

「え?うちの前にいるの?」

「うん、、、。」

「え?? いや、もうすぐ着くけど。ちょっと待って、すぐ着くから!」

青信号が点滅しだした駅前の横断歩道を速足で渡り、家までゆるやかな下り坂になっている道を急いだ。なんで私は駅から徒歩10分もかかるところに住んでるんだろう!と悔やみながら。

 

そしたら、下り坂の向こうに、よく知ってる人影が歩いてくるのを見つけた。

 

「おつかれ。」

「お疲れさま…」

「よく考えたら部屋番号知らないし、そこに立ってるのも不審者丸出しだから迎えに来た。」

と、シゲは電話と同じことを口にした。

「仕事終わったの?」なんとなく噛み合わない返事だなと思いながら私は言った。

「うん。今日はもう。」

このへんは都心だけどあまり人通りはない。それでもなんとなく気になって後ろを確認した。

「大丈夫だって。」とシゲが言う。

 

二人で並んで、私がいつも通る道を歩く。

「これ渡そうと思って。」と、シゲが手にした紙袋をかかげた。

「何?」

「ローストビーフ。」

「ローストビーフ…?」

「うん。」

「え?ローストビーフ渡しに来たの?」

「うん。」

「なんで?」わけがわからなかった。

「いや、なんでと言われても....。昨日、様子おかしかったし。昨日の店でローストビーフ食べた時。暗くて味が分からないって言ってただろ?だから。」

「だから、、、、」

 

シゲってやっぱり、、、私は思わず吹きだしそうになった。頭の中でとっさに今朝出てきた自分の部屋の状況を思い浮かべた。大丈夫だ。

「シゲ、時間あるんでしょ?家で一緒に食べようよ。」

「えっ、、いいの?」

「だって、私居なかったらどうするつもりだったの?」

「いや、、考えてなかったけど、フツーに帰ってうちで食べてたわ。」

「良かった、間に合って。」

 

以前の雰囲気が戻ってきたみたいだった。

 

 

シーン20:部屋

建物の入口から私の部屋までのあいだ、シゲは黙って私の後ろに付いてきた。

鍵を開けて扉をガチャと開き、先に私が入って「どうぞ」と促す。

「失礼しまーす…」と言いながら、キョロキョロと周囲を見るシゲ。うわ、シゲが私の部屋に…

 

ローストビーフ切るからキッチン使ってもいい?と早速言うシゲに、包丁はここ、お皿はここ、と簡単に伝える。私はリビングに置いてある雑誌やリモコンを片付ける。

シゲは「はぁーい…」と言いながら、紙袋からタッパーを取り出した。

 

「まさかローストビーフ作ってきたの?」

「うん。」

「シゲのおく」

と、私は言いかけて止めた。

 

「なに?」

シゲがこちらを向いた。いや、なんでもない、と言う私に、なに?今なんて言ったの?とシゲは手を止めて眉間にシワを寄せこちらを見た。シゲの大きな目で見つめられた私は、仕方なく、

「シゲの奥さんになる人は幸せだな、と思って。」

 

そう言ったら、シゲがつかつかとやってきて、無言のまま、いきなり私を強く抱きしめた。

 

「俺たち、もうそういうの、やめよう。もう、そういう、ごまかしたり、なにもない、みたいにするのやめよう。」

 

シゲは私を抱きしめながらそう言った。あ、あの時の匂い。テントの中で抱きしめられた時の匂いがよみがえった。

 

「そうやって、ちょっとづつ俺から距離を取るな。」

 

シゲの苦しそうな声が私の髪にあたって聴こえた。

 

「シゲだって」私の口から言葉がこぼれた。「シゲだってすぐに線を引こうとする!私にはシゲの気持ちなんてわかんないよ。近付いたと思ったらすっと離れて。どの距離で私、いればいいのかわからない。諦めたみたいな顔して、ごめんって言わないで。」

私の中で溜めこんでいた気持ちが爆発しそうだった。

「会っても苦しいだけなら、私たちもう会わないほうがいい。」

 

「いつから?」

「え、、」

「いつからそう思うようになった?」

「シゲのことを好きになればなるほど、ダメだって思った。好きになっちゃいけないって。」

「なんで?」

私は言葉が出なかった。

「俺の仕事のせい?」

 

ふぅ、、、と溜息をついて、シゲはずるずると壁にもたれてしゃがみこんだ。

 

「あのさ、、、俺も普通の人間だし、普通に人を好きになるよ。そっちが俺のこと気にかけてくれるのは分かってる。正直、今の俺に付き合ったりする時間や余裕があるのか、俺一人の問題じゃないこともあるから、自分でも分からないんだけど。だから、ずっと曖昧な態度で示してた。」ごめん、とシゲはまた言った。

 

そして一呼吸置いて、

「でも、もう無理なんだ。」と、床に座り、両方の足を投げ出すように広げて、

「おいで。」と言った。

 

「来なよ。」

立ち尽くす私の手首を掴んで自分の足の間に座らせ、ペタンと座り込んだ私に、

「なんか支離滅裂だけど」

と言い、

「今日はこれを言いに来た。好きだって。」

と言った。そして、私の頬を両手ではさんで口づけをした。

「好きなんだ。」

 

何度か繰り返してる間に、シゲの瞳の中に私が映ってるのが見えた。

「あのね」

「うん?」

シゲが私を覗きこんだ。

「私も、今日言おうと思ってた。」

「ほんと?嘘っぽくない?」シゲは微笑みを浮かべた。

「本当。朝の電車の中で今日言おうって決めてた。」

「俺のローストビーフが伝わったのかな。」

 

「シゲが好き」「好きだよ」

二人の声が重なった。シゲがフフッと笑い、

「どうなるか分からないけど、お互いの気持ち、大事にしような。勝手に判断したりするのは止めよ。できるだけ時間も作るし、大切にするから。」

と言って、私の手を持って立ち上がった。

 

おいで、と手を繋いだまま私をキッチンに連れていき、器用に左手でタッパーの蓋を開けてローストビーフを取り出した。

「昨日、家に戻ってから作った。泣いてたの悲しくて。明るい部屋で笑いながら食べて欲しくて、気が付いたら夜中に作ってた。上手にできたら持って行こうって思って。願掛けみたいな。」

ローストビーフはツヤツヤしてて、とても美味しそうだった。一切れ切って、指で掴んで私の口に入れてくれた。

「どう?」

「うわ、すごくおいしい....!!」

「だろ?」

そう言って得意げな顔をするシゲは可愛かった。

 

 

シーン22:朝

朝起きたら隣にシゲがいた。朝でも綺麗な顔だな....

立ち上がってトイレに行こうとしたら目が覚めたみたいで、今何時?と聞いてきた。まだ6時前だよ、と言うと「もうちょっと寝よ」と言ってすぐに「あ、ちがう。家に帰らないといけないんだった。出るわ。」と言った。

ねむ、、、とあくびをしながら服を着て、水だけ飲んだシゲは「これ....」と言って何かを出してきた。

 

「俺の家のカギ。あとこれ住所。」

びっくりして思わず「用意周到!!」と口から出た。

大きく笑ってシゲは「だって、時間も不規則だし、この方がいいでしょ?」とカギと住所が書いてあるメモを私に渡した。「カギと紙、一緒に落とすなよ!居ないときに勝手に入って大丈夫だから。」

「私、料理あまり得意じゃない。。。」と言うと、

「そんなの期待してないから!」とまた笑う。

 

「で、俺のは?」と要求するシゲに、

「えー?そういうこと自分で言うー?」と言いつつ、どこかにスペアがあったな、とガサゴソして渡す、はい、これシゲの。

「おー、やった~。ね、出張中とか入っていい?」

「ええっ?私の出張中に来るの?」

「だってー、そういうの憧れるしー。女の人の部屋あんまり行ったこと無いしー。」

「へぇー」

「不服そうな時、へぇ、って言うよね昔から。」

「そうかな?言ってる?」

「うん。そういうところも好きだよ。」

「へ、へぇぇぇーーー!!?」

「今のはわざとでしょ。」

わははははっ!と笑うシゲは本当に楽しそうで、私はしみじみと幸せを感じた。

 

「あのさ、もし良かったら、今日それ使ってうちに来ても良いよ。今日も会いたい。」

びっくりして二度見した。

「分かった。連絡する。」

「やった。うわ、なんか俺ニヤニヤしてる。笑い止まんない。やっべぇ。」と両頬を手で押さえるシゲ。か、可愛い!

 

「じゃあ、どんな感じか分かったら教えて!」と言って、朝日の中をシゲは出ていった。

 

 

シーン23:朝の電車

電車の窓ガラスに映った私もそうとうニヤニヤしてた。昨日の朝は死にたいほどの気持ちだったのに。嘘みたい。唇の端を噛んでないと自然と笑みがこぼれてしまう。

秋晴れの朝で、世界が輝いて見えた。

 

携帯が震えた。

見たらシゲからで、青い写真が送られてた。

「今日すごい空が青い!!」

って書いてあった。

わたしは堪えきれなくなって、フフフフ!って笑ってしまった。

良かった、ほんとに。

大好き、って思って青空に目をやった。

 

 

 

 

………………………

 

おわりっ!

 

良かった~ 涙。

前回はなんだか切ない展開になって、書いたあとに悲しくなって落ち込んじゃいました。バカか。シゲ担なんだから、シゲのこと幸せにしないと!って反省。

前回の読んでくれた人が「続きは?!」ときくのは、シゲが幸せになってほしいからだよなぁ~、って思いました。で、続き書いたら、良かった…ほんと良かった…ほんとに…って気持ちになりました。(ぜんぶ妄想、すごいマッチポンプ…または自給自足。)

 

幸せになってねー!

最後まで付き合って頂いた方にお礼を言いたいです!