ゆずこんぶおいしい

アイドルのもつ一瞬の輝きと永遠の力について考えるblog

舞台『ハウ・トゥー・サクシード』を見に行った感想。

10月8日。ハウ・トゥー・サクシードを見に大阪まで行ってきた。「大阪の電車うるさ!」っていうのが四半世紀前、初めてこの地に来た時の第一印象だが、地下鉄の車内は静かで2020年なんだな、と思う。

心斎橋のジャニランドに連れてってもらった。整理整頓の行き届いた店内の様子と膨大なジャニーズグッズに驚く。2005年2006年2007年…2018年2019年と丁寧に時系列に仕切られたシゲのうちわを棚から取り出し、「これは17歳の時のシゲ。とすると、この時私は30歳か」と過去を振り返る。

若さを失いかけていることに気付いた時に、人はアイドルに魅せられる。自分の経験値を大きめに言ってみた。

キラキラと美しい彼らの成長曲線の上り坂よりも下り坂をどう下っていくのか、気になってうちわを棚から抜き差ししてみる。私はデビュー当時の慶ちゃんのビジュが大好き。つるんとした顔とフワフワと柔らかそうな髪、きりっとした目元。思わず抱きしめたくなる。センターの山Pを内君と慶ちゃんが囲む在りし日のNEWSはチャラチャラしてて、ヒエラルキーが明白。究極のイケメンを陽キャが囲み、外周に向かって陰キャ気味になっていく。言うまでもなく、テゴシゲは一番端。

それにしても、10代から30代の顔面の成長ぶりを「うちわ」で確かめられる文化、すごい。うちわコーナーの隣は「スナップ写真コーナー」になっていて無印のファイルの背に「増田貴久」などと個人名が書いてあり、「お好きな写真を抜いてレジにお持ちください」とある。他の人のファイルが各4、5冊あるのにシゲのファイルは2冊しかなかった。シゲ担はシゲの写真を手放さないし、そもそも降りないからではないかと推測した。無印ファイルから写真を抜いていく行為はなんか悪い事してるみたいで背徳感がある。この場所は以前、ジャニーズ事務所公式ショップの通称ジャニショだったと聞き、「公式から非公式へ受け継がれたってこと?」と、関西商人の魂を見た気がした。

 

雨の中、オリックス劇場へ移動。席が決まったチケットだから列に並ぶ必要が無いのに並んでしまうのはオタクの性か。

数か月前、「ひと席分あるから、大阪来る?」ってきかれて「行く行く!」と2つ返事で返したときは「.....でも、どうなるかわからないよねぇ?」と正直思った。さまざまなイベントが中止になるなか、この舞台もどうかなぁ、と。でも、マスクの上にフェイスシールドして稽古してるらしいまっすーの事を思うたび自らの手を洗いたくなったし、東京公演が始まってからは毎日、期待しないお知らせが入らないよう、なんとか千穐楽までいけますようにと祈っていた。

昼の部を見た人たちが駅に帰ってくるのを見て、ついにここまで来た、そして私たちの夜の部が終わったら明日が千穐楽だと、渡されたバトンを次に送るような、責任感にも似た気持ちになる。私がマネージャーならスケジュール伝えるのが申し訳ないって思うほどの忙しさのなか、夢のミュージカルにたどり着いたまっすーを思うとものすごく緊張してきた。

 

席に着く。3階席は見晴らしがよい。生演奏が聴こえ、幕が上がった。梯子に腰かけて本を読んでる窓ふきまっすー、いやフィンチ。私は双眼鏡と肉眼を使い分ける。面接に潜り込んで大会社の社員になるフィンチ。「まっすー」がよくやる、へぇ~そうなんだぁ~?な、ちょい唇尖らせたおとぼけ顔。キスを求められて「一回だけだよぉ?」っていう甘えた口調。もぉーあなたって可愛いんだから!仕方ないわねぇ!とどんどん出世していく。

社長がこっそり編み物を趣味にしてるのを知ると自分も編み物をして社長に取り入る。危機を察知すればそれをかぶらないように立ち回る。良く言えば如才ない。悪く言うとヤな奴なのだが、むしろ(フィンチ、やってんな)って感じでまぁあいつなら仕方ないって納得の出世ぶり。閃いた!と主に上司への効果的なゴマすり方法をフィンチが思いつくとき、私もマスクの中でハハッと笑いが出た。媚びうる為のアナグマダンス(社長の出身大学のラグビー部の応援歌ダンス)知らないフィンチが最初は社長を見よう見まねで踊るのが2巡目ではすっかり吸収して自分のものとして踊るの、アナグマっていうかカワウソだった。まっすーってたまにカワウソ感ある。

 

1952年出版のシェパード・ミード『努力しないで出世する方法』がこの舞台の原作。「戦略的なデスク管理を通じて極度の多忙さの外見を育てる方法」とか「責任を委任する方法:たくさんのアシスタントを」とか「会社の選び方:他の人が何をしてるか誰も知らないほど充分に大きい会社を」等、企業が巨大化し、増加した中流階級と消費社会を風刺した作品だそう。

上司に取り入って出世したい男と、そんな男を支えて結婚してもらって家庭に入るのが夢だという女。スーツとワンピースがざわめく舞台を俯瞰で眺めていると、私この時代に生きてなくて良かった~と思う。今、この劇をやることにどんな意味が隠されてるんだろう?この劇についてもっと知りたいと、幕間でパンフレットを買う。

 

パンフレットの、黒髪オールバックの増田さん、私がブロードウェイの舞台関係者なら「このクールでホットなアジア人の俳優誰?!情報詳しく!」と言う。アジア人のきめ細やかな肌、涼し気で優しい目元、きりりとした眉毛、通った鼻筋に丸い小鼻、男性的なもみあげ。東京の舞台が始まってビジュアル公開されたとき、ポスターのビジュアルと違う!と思った。しかし、後半になり、だんだんと洗練されていくフィンチ。洗練と言えば、パンフレットを見るまであの秘書が雛形あきこさんだと気付かなかった。女優さんみんな綺麗で細くて目の保養。パステルカラーのワンピースが可愛い。パステルブルーのコート欲しいな~と、人間は何かをしながら別のことを考えることもできる。

 

 

重要なプレゼンの前のフィンチの独白シーン。アクリル板の前に立ち、今までになくシリアルな表情を浮かべるフィンチを見て、(あ、分かった。これは刑務所で誰かと面会してるのだ。フィンチの動機は復讐だ。)と勝手に推察するが、よくみたら洗面所の鏡というていのアクリル板だった。ドラマ『ボイス』を引きづって「まっすーの二面性キター!」って思ってしまった。

それくらい、なーぜフィンチはこんなに出世したいのか?窓ふき前は何をしてたのか?フィンチって何者?という問いに答えはない。パンフレット読んだら増田さんもそこが気になってキャストと話したけどどこにも書いてないのがかえって面白いと言っていた。

 

ここの独白シーンを境に舞台は転じる。他人のアイデアを拝借してフィンチのオリジナリティを加えた結果、フィンチは大失敗する。やってもうた!みたいな演技が良い。やってもうたけど腹はくくるところにフィンチの魅力がある。会議に出席したら元窓ふきだった会長が登場し(まだイケる!)とへこたれないフィンチ。そして「我々はひとつなんです!」と共同体をアピールする歌と踊りを披露。

ここの群舞が素晴らしかった。ブロードウェイで最初に上演された当時、スーツを着たビジネスマンたちが歌って踊るシーンに演出家は頭を悩ませたそう。だからこそ、このシーンは映える。

NEWSでみせるフリーな感じのダンスや振り付けとは違うダンス。まっすーがあんなふうに踊るのははじめて見た。一晩寝てもあのダンスが頭から離れなくて余韻が残る。もちろん歌もいい、あんなに伸びやかな声で歌ったり喋ったり、あらためてその実力を知る。

実力もあって集客も完璧で、人柄も良くて可愛らしいとくれば、これからも引っ張りだこだろうな、とまっすーの未来に想いを寄せる。まっすーはこの舞台の経験をへて、自分のキャリアに対する「欲」がさらに出てきたのではないだろうか。なかなかチケットを取るのが難しいだろうが、是非ファン以外の人にも見てもらいたい。

 

気迫の踊りと歌で重役たちの説得に成功したフィンチ、驚きの結末。そしてエンディング。バド(おバカキャラだけどアイデアある)やミスジョーンズ(社長を仕切ってる)、ヘディ(勉強したいのに認めてもらえない)などの個性も光ってた。「考えることを放棄して誰かが決めたルールに乗る必要はない。自分の行動は自分で決めることができる」と、私なりの教訓を見出してみた。

 

これは私が友人と久々に会って5分後には「人生とは」って言いだすタイプのオタクであり、NEWSは哲学であるから。それは「NEWSってもはや概念だよね」とシゲに言ったなじみのプロデューサーに「分かる!」と返したいぐらい。

帰りの新幹線で『NEWS LIVE TOUR 2020 STORY』ってステッカーが貼られているノートパソコンを開いて、新大阪で買った本日発売のシゲが載ってる雑誌を読んでる私は、どこからどうみてもガチのNEWSファンで、そんなつもりはなかったんだけど。なにかものすごく固い信念のある人みたいで。

 

まっすーのNEWSへの執着ってすごいなって感じるけど、まっすーも別にそんなつもりなくて、来た仕事を期待以上のパフォーマンスで返すことを心がけてるうちに、「NEWSの増田貴久」になっていたのかもしれない。未来から振り返ったとき、ああ、あそこも出発点だったよねって言える現場だった。しかし、そんな「出発点」が今のまっすーには数多くあるのだ。そんなまっすーを頼もしく思う。

 

エンタメというのは日常のスイッチングのような、ポイントを作るようなもので、こうして2時間半みっちり上質なものを取り込んだあとは不思議と元気がでたり、その時のことを思い出して頑張ろうと思ったり、啓蒙されたりする。

行けなかった人の分の拍手も送らなければ、と色んなリスペクトを込めて拍手を送った。舞台の上の人もスタッフも観客もお互いを称え合う、そんな経験はなかなかできるものではなく、消費者以上の何かを感じ、私もこの世界に参加しているんだという気持ちになって帰ってきた。

 

車窓の外を見ながらこの奇跡的な舞台の成功について考えてたら、教習所の教官が、「信号のない横断歩道で歩行者が立ってる時は基本赤信号と思ってください。あなたが一時停止すれば、対向車もあなたにならって停止するでしょう。誰もしないならあなたがお手本になればいいのです。それで社会は変わっていくのです」と言ってたことを思い出した。語らずも行動で示す、それで一座を成功に導いた座長はまっすーというより、「増田貴久」の顔だった。