テレビに何を期待しますか「ほっかいどうが “イッキ見”SP 」

先日、北海道ローカルで放送されたNHKのほっかいどうが"イッキ見"SPがかなり良かったので感想。NHKプラス(配信期限 1/23)で見ました。

www.nhk.or.jp

 

気まぐれに衝動的に制作した不定期の北海道でしか放送されない番組、らしい。

見ながらすごい北海道ぽいと思った。

北海道という地域性が、と7本全て見終わってシゲが言っていたがほんとにそう。てんでばらばらな内容ながら、全体として見ると「北海道だな~」と思う。

北海道には推しのクリームソーダ作ってくれる店があるすすきのも、細川たかし記念館がある真狩村も、隻眼の老猟師も、十勝岳も、旧炭鉱もある。

でもまとめたとき、「人間の業」に想いをはせてしまうのは、「めっちゃ雪降るじゃん!」だし「自然こえぇ~!」な、北海道の自然が持つ磁力と、その中で生きて行く人間の儚いけど強くスパークする一瞬なのかな~と、コロナ前まで北海道に住んでた私は思った。

3人(ヤマザキマリさん、上白石萌音さん、加藤シゲアキさん)が動画を見ながらあれこれ喋り、動画見終わったあとで担当ディレクターが現れ一言ふたこと話す。進行も台本も無くただ長い時間色んな動画を一緒に見ることで3人の距離が縮まっていくのが伝わってきた。

 

1.隻眼の老猟師

獣害から人々の暮らしを守るため、罠をしかけとどめをさす猟師の話。足が罠にかかり、とどめをさされ絶命する鹿の鳴き声。とどめをさすときには絶対に目をそらしてはいけない、と猟師は言う。命を奪うことから目をそらしてはいけないという意味も込められていたのかな。共存共栄とは、を考えさせられる。これを見る限りでは、彼らにとって人間は敵、だもんな~。バーンと発砲した弾がヒグマに命中してヒグマの命が消える瞬間、まざまざと見た。すごかった。

 

2.推しクリームソーダ

クリームソーダを「概念の推し」として楽しむ人々の話。推しをイメージしたクリームソーダを前にすると「私の気持ち実在してるぞ!」と思える、あまり有名じゃないアイドルを推す女性。推しというのは生きて行くための工夫、なんだねと言うヤマザキさん。彼女に影響されてジャニーズJr.を推すようになった男性の「本当の意味の推す、が分かった」という話。いつも頭の片隅にあるような、シャワーを浴びてるときふと思いだすような、そんな感じです、と語る彼氏に、彼女が無言で拍手するのを見る3人の間が良い感じ。テーブルにある見慣れたロゴ入り公式写真を見て「7MEN侍。後輩です。」とシゲが言う。推しと一緒にこれを見る私。推しの入れ子構造がシゲといると起こりやすい。

ちなみにNEWSのメンカラ2色制(俺たちメンカラこだわりないから適当にやってね的な)は、推し色という概念すら飛び越え、新たなステージっぽい。

 

3.筋肉温泉

ここの温泉(十勝岳温泉 凌雲閣)行ったことある。露天風呂に足一歩進めたら、いきなりものすごい深いし超茶色いし景色凄いし、うわぁ北海道!って思った記憶。自由さやおおらかさに触れると北海道だな~と思う。この温泉はすごく茶色くこっくりとしてるので、筋肉の上でこの茶色流してみたい!と思うディレクターの気持ち、わかる。登場したディレクターたちは関東出身のかたが多かったが、やっぱり北海道で暮らしてると精神面も北海道ぽくなっていくんだろうか。

 

4.地方の若者のデートスポット

告白される場所なんてもうミスドでいいよ!と、北海道の高校生の後ろに映るミスタードーナッツを見て私は思った。青春~。上白石さんも言ってたけど、この歳で地元の景色が好きって言えるのうらやましい。真狩村の高校生、農業クラブ、告白、好きな人、生徒会、全国大会、ってワードにうわぁオルタネートみたい!って思った。シゲも(オルタネートだ)ってきっと思ったと思うのだけど、あそこで自著オルタネートの名前を出さない彼の謙虚さみたいなもの、好き。真狩村も行ったことある、細川たかしの若い時かなりイケメン。

演技って自分に引き寄せますか?それとも自分が近づきますか?と、演技の話がスタジオ雰囲気の中で自然にでてきたのも良かった。自分を打ち消したいという上白石さんも、自分の経験を役に繋げていくというシゲもなるほどだった。上白石さんが「シゲちゃん」って呼んでるところ、もきいてみたかった。

 

5.選挙にでる人の気持ち

夕張のイベントで遭遇した鈴木宗男氏の政治家オーラにびっくりした経験がある。駐車場で車に乗り込んだあと、先回りして角に立つ秘書たちに車の窓を開けて挨拶する姿があの時のままで、政治家のこの謎オーラって独特。動画の中で出てきた「選挙に出るのは川を渡るのと一緒。一度川に入ったら進むしかない。」という言葉説得力ある~。ある意味、選挙って「沼」みたいなもんだな。ハマってる人以外から見たらちょっと異様に見えるのも含めて。

 

6.UNDERMINE

冒頭から最後まですっごい引き込まれた。北海道の閉山した炭鉱では今も5人の男性がいて、汚染された水の処理をしているという事実から発想されたアニメーション。人類が生き続ける以上、未来永劫、水は処理し続けないといけないらしい。

セリフが無いので色んな想像が掻き立てられる。歴史を俯瞰で見せて、さらに語られない部分まで見せる。UNDERMINEのその下にまだある、っていう終わり方も良かった。

 

7.出産

ディレクターの家庭の変化についての話。赤ちゃんが無事生まれるという話はどんな時も温かい。ファミリーフィルムを見てるみたいで、子どもの自然な表情や仕草が可愛らしい。6才くらい、この年頃の女の子が持つ、面白さ伝わる。人が生まれる様子をみて、自分も生まれて来て良かったと思える動画。

 

と、これら15分×7回がイッキに流れてきた。

自分では選択したわけでもなく偶然で与えられた衝撃って大きいよな。確かに「猟師 ヒグマ」で検索しないもんな動画。この番組見なかったら、ヒグマが弾を撃ち込まれて命が消えていく瞬間見ることもなかったもんな~

まぁ、これを見てるのは「シゲが出てるから見る」と自分から選びに行ってるわけではあるんだけど。

油絵なんて(お金にならないのを)やってたら飢え死にするよと言われたけど、それやる人いなくなったら油絵そのものが無くなるんだから、と思ったというヤマザキさんも、余白を「要白」と言い、物語をみんなが求めてるのは確かだから、そこは作り手の力量。というシゲもかっこよかった。

良き番組だったな~

テレビに何を期待しますか?って最後に3人に投げてたけど、私はなんだろう。上白石さんがいうように、ランダムな出会いを期待するかな。

ランダムな出会いで誰かの濃密な時間に触れると、お!と思うよね。

次回もまたあったら良いな。

ほぼ初対面の3人が同じ動画を見たせいで、深い会話をするようになるのも、ドキュメンタリーだった。

そして、北海道行きたくなる~

 

NHKプラスで 1/23(月)まで見れます!

もういっかい見る時間作ろっと。